第64章 62.
「添い寝くらいケチんなよ、減るもんじゃねーだろ?」
『減る、何かが』
何とは言わないけれど。
もぞもぞと布団をかぶったらしい。肩が密着した。
「ど真ん中陣取ってねーでもっと端にいけよ、組み敷くぞ」
『それは困る』
「おい、離れすぎだろ、あっ落ちるだろーが!真ん中寄れよ」
『どうすれば良いと?』
もぞもぞと仕方なく真ん中に寄れば背に体温を感じた。
「ん、良し、と言いたい所だがお前湿布くっせーな。背中じゃない、こっち向けよ。寝顔がじっくり見れないだろうが」
『言いなりになるのが気にくわないけど、その湿布貼ってくれたお礼にこれくらいはしてあげる』
カーテンから僅かに透けた明かりだけが頼りの闇の中、方向を変えてぼんやりと見える顔を両手で挟む。
そっと触れるだけの口付けを落として、もぞもぞと私は布団に潜り込んだ。煙草臭いタンクトップの胸元に額をつけて目を閉じる。
『おやすみ』
頭上で間を置いておやすみ、と囁かれると私はその体温と鼓動に酔いしれながら夢の世界へ飛び立った。