第64章 62.
自分の部屋の浴槽から上がり、ブラジャーも着けず素肌の上に寝間着のパーカーに着替える。
私より先に上がっていたゾンビマンは煙草を吹かして、私が出てきたのを見てニヤリと笑った。ああ、そっちに行くのに足が進まないな…
「ほら、ちゃっちゃと座れ」
ベッドをぺしぺしと叩き、ゾンビマンは吸っていた煙草の火を消して携帯灰皿をしまう。
言われるがままに歩み寄り、ベッドの真ん中に来る。ゾンビマンに背を向ける形で正座するように座り、上着のファスナーを下げる。
ぱさりとパーカーがベッドに落ちる音、上半身にひんやりとした部屋の空気を感じた。
「あー…思ってた以上に痛々しいな、今の内にちゃんとやっとかねーと痕残っちまうぞ」
背中を数回撫で、邪魔だったのか私の髪を掬い上げては肩の方へ掛けてくれる。
両手で胸元を隠し、普段縛っていた髪がほいほいと視界の中に入るのが見えた。髪が巻き込まれないようにと、ゾンビマンが私の代わりにやってくれているようだ(両手は外せない、絶対にだ!)
『そんなに酷い?かさぶたくらいなら分かったんだけど』
「青だとか赤だとか紫といったカラフルな背中だ」
と言って湿布をシートから剥がす音の後、よく冷えている湿布を貼り付ける。
湯上がりの温かい肌に冷たい湿布が貼り付いてあまりの冷たさに背筋を伸ばす。
冷たいのを我慢して、終わったぞと言われてお礼を言いながら上着を着る。脱いだ時の自分の体温が少しだけ残っていて温かい。
「じゃあ風呂借りるからな、覗くなよ?」
『どこぞの変態じゃないんだ、誰が見るか』
任務を終えたゾンビマンは風呂場へと向かう。
こんな夜まで、特別な感情を持つ異性がいる自室にそわそわしながら待っていると、風呂場のドアが開閉する音。
平然を装う為、急いでサイタマ達の部屋の壁側に視線を向けた。
風呂上がりのゾンビマンは湯上がりだって言うのに不健康そうなままで、黒いタンクトップを着て私の隣に座る。
「いい湯だった。ありがとうな」
そして…。
私が普段眠りに使用しているベッド。これは1人のみが使える大きさ。
そのベッドを巡り今宵、壮大なる戦い始まろうとしている。