第63章 61.
手を広げてバリケードをする。さあ、この空気を読んで早くリビングへ、ゾンビマン!
『ジェノス落ち着こうか。ゾンビマンは悪くはないからさ』
ジェノスの両手が私の両腕に置かれた、と思ったらその力は下へ。バリケードする私の手を気をつけ!の状態にされる。バリケードはあっという間に壊された。
「悪くない?俺や先生、キングにフブキ、皆が聞いてるぞ、ハルカの貞操の危機が、」
『あ、あー!聞こえないっ!』
「お前な…っ!」
ジェノスが一歩踏み出したのでキッチンからリビングへ。
サイタマの後ろに廻る。ジェノスはサイタマを慕っているから手は出せないハズだ。「先生を盾にする気か、お前は!」と言われたけれど気にしない。
そのサイタマは厚い少年誌の裏表紙を見ていた。あ、ああ…毛がハエールとかそんな広告が出ているからか。サイタマの頭皮に毛根が残ってるなら効くかもしれないけれどさ…。
サイタマは主に男性の悩み解消の為の広告から顔を上げ、私からゾンビマンへと視線を移した。
「ん?ゾンビマンお前飯食ってくの?」
ちゃっかりとテーブルを前にして座り、くつろぎ始める。どうやらジェノスの尋問は有耶無耶になったようだ。
煙草の箱でも取りだそうとしたのか、コートに手を入れた瞬間、ジェノスが「煙草毎焼却されたいか?」とキッチンから脅す。もちろん燃やされたくないゾンビマンは何も手に持つ事なくテーブルで頬杖をした。
「…ああ、食ってくし泊まってくぜ?」
『「泊まってくの!?」』
思わず横に居たサイタマと目を合わせ、声も揃えてしまった。
なんか部屋の会話の流れでご飯何?と聞いてるから夕食食べて行くんだ、くらいにしか思ってなかったけどお泊まりについては初耳。
サイタマは私とゾンビマンを見て、少し引いた様子を見せた。
「何お前ら…さっきまでお熱い事してたのに今晩延長戦でもすんの?随分とお盛んなこと…」
『少なくともサイタマの想像するような事はしてない(…と、思いたい)』
「まぁ、どっちでも良いけど、ゾンビマンは俺らの部屋で寝んなよ。狭いし」
サイタマの最悪な一言を受け、私は渋々調理中の鍋の湯気に埋もれているジェノスの元に手伝いに行く事となった。
里芋を煮ながらお腹を鳴らす私。
一方で、丁度この時間に遠くの空で悲劇が襲っていると知るのはもう少し後になってからだ。