第63章 61.
「謝んのはこっちの方だ、お前はもう謝るんじゃねぇよ」
博士の元に居たあの頃のように啜り泣きながら、ひたすらにごめんなさい、という私の頭を撫でる。
何故ゾンビマンがそう言うのか?理由が分からない。滲んだ視界、電気を付けていない部屋は段々暗くなってきていた。
「お前とはぐれた俺が元凶なんだ、一緒に居ればそんな事にならなかっただろうし。お前がこんなに傷つくことも心無い奴にに犯される事も無かっただろうな」
優しい手つきで私の頭を撫でる。
「本当にすまなかった」
後ろから優しく抱きしめるその声は本当に申し訳なさそうで余計に私の涙の量が増える。
回された腕に手を触れると私の涙で濡れて冷たく。
耳元で再び、ゾンビマンが言う。
「それでも俺にとってお前は汚れちゃいない」
優しく頭を撫でる。私が泣きやむまで、日が落ちるまで。
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『泣いたのバレるかな?』
サイタマの部屋前のドア、私は顔を指差して小声でゾンビマンに問いかける。ゾンビマンがめんどくさそうにバレるに決まってるだろ、とドアノブを開けた。
開けた瞬間から明かりと煮物の香り。
部屋に入って、リビングよりも先にキッチンに居るジェノスと合流した。
目があって、またこの前のように分析された。
「お前は本当によく泣くな。泣く事の出来ない俺にとってそれは羨ましい事だが…」
瞳の光の残光。後から入ってきて様子を伺うゾンビマンをまたもジェノスは見ている。見ているというよりも睨み付ける、と言った方が良いのかもしれない。実際ジェノスの表情はこちらからは分からないけれど殺気立ってるのが分かった。
「お前、何をした…?怪我の完治していないハルカだ、無茶は出来ない。今の今まで長時間剣術を教えていたとは言わせないぞ」
少し困った様に、助けを求める緋色の瞳がこちらに向けられる。
確かに剣術以外の事をしていた時間の方が長かった。刀の手入れとかそこは真面目に。のんびりと話をしたり、抱きしめられたり。
そして厭らしい事になりかけ……ほぼ厭らしい事だ、アレ。実際完走はしなくとも…ねぇ?
とりあえずゾンビマンが丸コゲになる前にジェノスの前に立ってゾンビマンをフォローする事にした。ジェノスの表情は鬼サイボーグという名に相応しい鬼のような形相。怪人の気持ちがちょっとわかりそうだ。