第62章 60.(微裏と回想のモブ裏表記有)
這い回る舌は引っ込み、まさぐる手は止まる。
そりゃそうだ、手の中の女がそんな汚らわしいやつだったなんて誰が思うんだろう?表向きはS級ヒーローだと言って、正義を奮う。
中身は汚い塵溜まりだ。なんでこんな私なのに笑ったり人を愛してしまったんだろう?
私だって恋人に触れたいし、これ以上だって…。
気付いたらもう戻れない程にゾンビマンに惹かれているのに。溺れるほどに愛してしまっているのに。
ゾンビマンの手によって乱れ掛けていた服が、ゾンビマンにとってゆっくりと戻されていく。その先へと進む気が無くなった様だ。
そして私の耳元で深呼吸する音が聞こえた。
「それ…本当に、お前が言った回数だけか?」
私はむせび泣きながら、首を縦に振る。
10回もない、たった6回、されど6回。今となっては実らなかったけれども、ゾンビマンに再開するまでに私の中に名も知らない男の種が蒔かれた回数だ。
再び見付けた繋がりはとても大切なもの。嫌われたくない、捨てられたくない!
ごめんなさい、ごめんなさい、と私は何度も呟いた。