第61章 59.
「おまっ…ぼ、墓穴掘ってんじゃねーよ」
誰のせいだ、誰の!
口元を手で押さえて必死に笑いを堪えるゾンビマンとは別に、怒りと恥ずかしさで震える私。しこたま笑ったゾンビマンは一つ咳払いをした。
「あー…じゃあ話を戻すぞ。手入れの見本は俺がしてやるから、それを真似しろ」
終わったら駄賃にお前からキスしろよ、と言いながらゾンビマンは刀を手入れする簡易的な道具をコートから取りだした。汚れないようにと床で道具を広げ、あっと言う間に脇差を分解して手際よく丁寧に刀身を拭う。
15分くらいは掛かっただろうか、組み立てられて元の形に戻った、私の脇差。
やはりここはこうとか語彙力の無い説明だったけれども、見とれてしまった。ポンポンするのは時代劇で見た事はあったけれど、分解とか油を塗るとか…。
鞘に入れられた脇差を差し出されて受け取る。ゾンビマンは両手を広げた。
「ほら、来いよ。そして好きなだけしろ」
『好きなだけって…キスするだけでしょ?』
それ以上の事をしたいならそれでも良いけどな、と妖しく笑うゾンビマン。
「そんなの、するわけ無いでしょ…!」
冷めた熱がまた顔へと集まっていく。下手なことをしたらまた隣の部屋から音で苦情を表現される。
私は恐る恐るゾンビマンの額に一度、そして触れるように唇に。計2回ほど口付けて、その後は恥ずかしさにその胸へと顔を埋めた。