第61章 59.
少し寂しい私の部屋で2人が
鞘に入ったまま構え直す。
ちょっとわくわくしてた自分自身にがっかりだ。
『あのさ、もうちょっと丁寧に教えてませんか?ゾンビマン先生』
舌打ちを我慢する私の代わりに、只今絶賛へたくそな先生が舌打ちをした。
「あ?これでも丁寧な方だぞ?なんなら手取り足取りついでに腰取り組み敷き色んな事をお前の体に教え込んでやろうか?」
『それは今教わる事じゃないし変態は警察に通報するから。というかどこが丁寧なのよ!』
丁寧?何言ってんの?これはテキトーってやつ。
具体的に言って欲しい。
"こうしてこうやってこうでこうだ"
…ナニソレ?アレ取ってアレみたいなやつと一緒で全然分からんわ!
部屋の中なので鞘から出さないままの刀の柄を握り、両者鞘をぶつける。恐らくゾンビマンの方は私がまだ打撲痕があるから手加減をしている。…で、ここをこうしてこうこうでこれだ、とか言ってくる。私の正常な思考は理解する事なく、やり場のない憤りを溜めていく。
私はなんとなく悟った。悟ったので、鞘付きの刀を引っ込める。
『……うん。場を踏んでいけばきっと慣れる、きっと慣れるハズ。もう稽古はいいです先生。で、手入れの仕方はどうすんの?』
「はぁ?」
ベッドに座り、昨日早速使ったんだけど…と一応ティッシュで拭いた刀身を晒す。ゾンビマンが零すように諦めやがった、と言って近付き、見つめる。
これはしょうがないじゃない。教え方が下手っぴな貴方に着いていけません。
「ちゃんとしたやり方があるんだよ、貸してみろ」
ん、と一度鞘に入れて渡そうとした時、しばらく見られた後に腕を掴まれた。
眉間に皺を刻み、腕の方を見ている。その片腕を上げられて、まじまじと食い入る様に一点をゾンビマンは近付いて見つめた。
まるで私がゾンビマンの頭を抱え込もうとしてるような感じだ。実際は向こうがこういう状態にしてる訳だけど。
「チッ、おい、打撲痕にちゃんと湿布貼れよ。立派な青タン出来てんぞ」
『背面の打撲痕、1人で全部貼れる訳が無いでしょう。ましてやこの部屋のお風呂場の鏡、外れてるし。
…サイタマやジェノスに貼って、とか言って頼めと?』
そう追加するとすごく嫌そうな顔をされた。