第60章 58.
コンコン、という本日2人目の来客の気配に私は怯えた。
ゾンビマンだったらどうしよう…!まだぽっこりとしたたんこぶをさすりながら机に突っ伏す。クソ、まさか監禁しに来たのか?監視係が2人?それだけは止めて!
「ジェノスー、お前が出てくれ」
手が離せないサイタマはジェノスに来客を任せた。
玄関にすら視線は向けず、ゲーム画面に熱中しているようだ。キングは玄関をちらっと見る。どうやらキングにはサイタマと違い、ゲームに余裕がありそうだ。
サイタマに指定された人物はカシャ、と音を立てながら立ち上がった。
「はい、先生。
ハルカ、お前はそこでじっとしていろ。出るな。いいな?」
『…はーい』
「返事は短くはい、だ」
『はい』
威圧の会話と共に足音が遠ざかり、ドアが開く音。
あのバリトンボイスが聞こえない事を祈りながら、来客の一言目を耳を澄まして待つ。
「今日も来てあげたわよ」
「先生、またいつものです。追い返しますか?」
ああ、フブキの声だ、安心した。そう突っ伏したまま肩の力を抜いた。
ジェノスの言葉にフブキがその言い方は無いでしょ!と言ってこじ開ける音が聞こえる。
靴に着いた砂が擦れる音、そして複数の足音がこちらへぞろぞろと入ってくる音。
良かった良かった、と私は顔を上げた。ホッとして。
「忠告を聞かねぇ悪い子はいねぇーがァー…?」
『ヒャッッ』
心臓が飛び出すくらいびっくりした。
無言で部屋入ってきて、いつもよりも目つきが悪く、そして眉間の皺は深く。
背に何か見えてはいけないような、オーラというかそういった邪悪なモノを纏っているように感じた。
『あっ、あわ、』
座ったまま後退りをする。けれどもテーブル、壁側に座っていたお陰で見事壁にたんこぶ部分を打ってしまった。
思い切りぶつけた訳じゃないけれど痛い所に衝撃を与えると痛いってもんで。
後頭部を押さえて亀のようにうずくまる様子を見て、ゾンビマンは笑い声混じりで言う。
「おー痛かったか?よーしよーし、可哀想だなぁ、忠告聞かないもんな?」
『行きと帰りは地べたで移動したから!』
「あ?完治するまで俺んちに居たい?」
『アッなんでもないです、発言は取り消します』