第57章 55.
部屋の前に辿り着いた。
もうちょっと話は出来ないだろうか?サイタマ達の部屋に行くのは簡単だ。でも、自分の部屋なら66号って呼ぶ事も出来る(ただし身の保証は無い)
少し迷って歩を進め、自分の部屋の鍵を開けた。
『寄ってく?』
お茶は無いけど、と付け加えて。
私の部屋は残念ながら寝る事・そしてお風呂とトイレだけが使える部屋。
家具は殆ど無くて、部屋にはサイタマの部屋の漫画が置いてあったり、手紙が入ったダンボールが2つ程置いてある。
ゾンビマンは少し考えてから、寄ってくと言った。
ドアを開け、靴を脱いで入る。着いてきたゾンビマンがドアを閉めた。
残念ながらこの部屋には食事や団らんなどに使われるような机がなく、椅子もない。家具としてあるのはベッドと小さな引き出し、ベッドサイドテーブル。
私は湿布とかが入った袋をサイドテーブルに置いた。
床に座るのが良いんだろうけど、私は生憎背面が痛い。もたもたとベッドに座った。
遅れてゾンビマンも隣に座る。
『また、博士に聞く事が出来ちゃったなぁー…』
76号。風神。出来れば私はジーナス博士に会いたくない。勝手ながら淡い期待を持った為にこうなった。
父親でも、母親でも思いっきり抱きしめて貰って、名前を呼んで欲しかった。そんな希望は夢の中。私についての資料を1人見て泣いた。今更、というか無理だと。
「お前は、またジーナスに会いたいのか?」
『そんなわけ無いでしょう。昨日の件もあって絶対会いたくない』
いつから私というクローンを作ったのだろう?名前を77号と呼んだ時から?76号は一つ前の数字だし。
66号と会った時、私は77号って呼ばれてた。孤児院の記憶だってある。完全に私こそがオリジナルだと思っていた。
ゾンビマンはシャリシャリを頭を掻いて、一つ咳をした。
「俺がジーナスに会った時にでも聞いといてやる。忘れないようになんか紙に書いてくれ」
『ありがと。ちょっと待ってね』
サイドボードの引き出しを開けて、メモ用紙とペンを取った。
膝の上に置いて聞きたい事を書き出す。77号という私はいつ頃作られたのか?76号はどこに居たのか?孤児院の記憶があるのは何故?そして資料に76号についての詳細なものが無かった事。
それらを書いて手を止めた。書いたペンが滲む。紙の上にシミを着くっていくのは、部屋の中で私が雨を降らせてしまったからだ。