第55章 53.
「なんか俺、情けねぇよな」
はぁー、と大きなため息を吐いてベッドに頭をダイブするゾンビマン。私の太もも辺りの掛け布団に埋もれる。
その後頭部に手を伸ばして、短髪に触れる。
『情けなくなんかない、今私が生きてるのは66号のおかげなんだし。…助けてくれてありがと』
もぞ、と頭を持ち上げて片目で私を見上げ、再びベッドに顔を埋める。珍しくへの字の眉だった。
ゾンビマンの頭を何度か撫でていると、情けない音が私の腹部から聞こえてきた。なんとも恥ずかしい!静かな空間だからこそ、余計にだ。
埋もれていた頭を上げて体を起こし、普通に座ったゾンビマンは肩を揺らして笑った。ああ、もう…笑うな!
「とりあえず退院して、飯でも食おうぜ?お前、丸一日なんも食ってないだろ」
『うん?丸一日も…?』
私はどうやら1日丸々睡眠に使ったらしく。目覚めれば生存本能が騒ぎ出したらしい。道理でめちゃくちゃお腹が空くわけだし、喉も渇くし、トイレにも行きたいわけだ。
着ていた服は畳まれて置かれていた。ああ、なんか私いつの間にか病院の服を着せられていたみたいだ。服も着替えよう。
『とりあえずトイレ行ってくる』
ベッドから降りようと、床に足を下ろす。靴を履いた所で少しよろけてしまった。
おっと、と言ってそんな私を片手で転ばないように支えられる。
「ほらよ。…じゃ、俺は退院手続きしてくるわ」
手を握ってちゃんと私を立たせ、ゾンビマンは病室を出ていく。
うん、私もさっさとトイレに行ったり服を着替えよう。静かな部屋で再び、腹の虫が鳴ったので私も一度病室を出た。