第54章 52.
……ああ、クソ!もっと速く駆けつけたら何か変わったかも知れねーのに。
ポケットから煙草の箱を取りだした所ではっとした。
「病院で吸ったらダメだろお前…常識的に考えて」
「吸えないように俺が全部燃やしてやろうか?」
引くハゲに殺気を出すサイボーグ。ハルカ、よくこんなやつらと住んでるな…。
煙草の箱が取られて、燃やされる一歩手前でハゲマントが「あ!」という声を上げた。
「おーいハルカ、怪我とかもう大丈夫か?」
振り返ると、眩しそうにして目を開けている。
ハルカが目を覚ましたようだ。キョロキョロと辺りを見回して状況確認をしている。
『ここ、病院…?』
「そうだぞ、病院だ。飲みモン飲むか?それとも食い物か?ジェノス、お前も今回は甘やかしてやれ!」
「はい、先生!」
煙草の箱を俺にぶん投げると、目を覚ましたハルカに色々と話し掛ける2人。
ああ、ほっとした……。強張ってた全身の力を抜くとあちこちが凝ってる事に気が付く。なんとも情けねぇ。
飲み物を半分ほど飲んで、落ち着いたハルカが静かに口を開いた。
弱々しく、哀しそうに。
『クローンに、遭遇したんだ。…でも、あいつはクローンじゃなかった。あいつは76号、オリジナル。クローンは私。
コピー人間は、私だったんだ…!』