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風雷暴見聞録

第53章 51.


「未完成な77号、必要ない。おまえはしくじり。私1人でい、イイ……ワタシの領域はソラ、お前ナナジュ…ナナ号、入った。ワタシのダイジなダイジなソラ、ケガレル」

両手を広げた、76号。

「領域に入ったナナジュウナ、ナナ号…バイバイ」

ゴゴゴ、と低く唸る空。突風が吹き、両足がコンクリートから引きはがされた。
前方からまるでピンポイントに私だけを狙ってるような風。自分の意志なくぶっ飛んだ。

『く、ああぁあ…っ!』

迫ってくる、いや待っている壁。打ち付けて大怪我をしないように、体の先端ではない、苦手だけれど首の後ろ、肩、両腕、そして足から出せるだけ風を出す。なるべく怪我を抑えるよう、体勢を変えなくては。
そんなに離れて居ない隣のビルの壁に背中から打ち付ける。衝撃を和らげたとはいえ、痛い。ビルの壁は私の形にめり込んでしまったようだ。
そこから重力に従うまま下へと落ちていく。およそ3階の壁だ、打ち所が悪いと死ぬだろうな。まだ、死にたくなんかないな。頭が、ガンガンする。
ぼーっと眩しい上を見上げた。

「二度と、ソラを荒らすなナナジュウナナゴ、ウ」

踵を返し、フードを被って風と共に消えた。
その76号後ろ姿が風に消える瞬間、私は"何か"を聞き取った。けれどそれを理解する前に周りの音が邪魔をする。

私の周りのコンクリートがパラパラと音を立てている。壁に埋もれていた私はそこから滑り、地面へと落ちていく。真っ逆さまだ。自力で怪我を抑える様に調節が出来そうもない、こんなにぼうっとした頭じゃ。
頭から落ちてるし、頭頂部からなんて今は風は出せない。終わったな。もう足掻け無い、諦めようか。ゆっくりと瞼を閉じた。

折角、楽しい人生だと思い始めた人生だったのに。
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