第53章 51.
「見えた!ハルカ、俺もそっちに行く、…無理に接触するな!」
接触するなと言われてもすでに接触している。
息が上がるゾンビマンは通話ボタンを終了した様だ。
目を離さないまま、私は携帯を仕舞う。
無風。
不安になるほどに、風が無くて下界では日常の音が溢れている。
「ハハ、ハハハ…!私のクローン、お前のクローン!ハ…ハハッ!」
屋根の上では、非日常だ。
『…何が可笑しい?』
オウム返しするように、彼女は何が?を繰り返しながら笑い声を発する。
何が姉妹のようだ。何が双子みたいなもんだ。何が……。
そんなの甘い想像の中だ。目の前のそいつは常軌を逸していた。救えるもんなら救っていただろうに、救えるだなんて思えない。
「お前がクローン、私のクローン。ワタシが…ナナジュウ、ロク号…ナナジュウナナ号、そう、お前こそがわたシのクローン…!」
ニチャア…と歪な笑みを浮かべると、頬の一部が割けてプシュ、と血が飛び散る。ゾンビマンの回復時のように蒸気を上げゆっくりとその部分は回復していく。
恐ろしい笑みだ。私の体が固まってしまったように動かない。
目の前のヤツは私に向かって歩幅は半歩ずつ、ゆっくりと近付いてくる。
『嘘だ…あんたが、私のクローン「嘘じゃ、ない!嘘じゃない!嘘じゃない!嘘じゃ、ナイ!」』
話せるのは話せるけれど、なにかがおかしい。片手で頭を押さえ、頭をブンブンを振る。まるで壊れているかのようだ。
やがては頭を振る動きを止め、片目だけで私を睨み付ける。もう片方の目はあるのか、潰れているのか分からない。
「博士はクローンを作った。本物のワタシが、カンセイケイ!ワタシはハルカであり、ナナジュウロク号でアあっあり、風神!
クローンの、ナナジュウ、ナナ…号…未完成!本当なら、ワタシの対の雷神のナマエ、博士に貰ってタ!
ウ、ウウウ…ウウウウッ!」
唸る。唸ると空に飛行機が飛んでるみたいなゴウゴウという音がする。
凄く、嫌な予感がする…!私は構えた。良かった、体はちゃんと言う事を聞いてくれた!