第51章 49.
少し表紙の掠れた手帳をアマイマスクは取り出し、パララ…と、何度も捲る。微風がアマイマスクの髪を靡かせた。
「…で、風雷暴の君はS級に上がるのかい?それともA級に残る?」
答えはとっくに決まっていた。
私はS級ランカーになり、上へと上り詰めたいと。
『私はもっと上のランクを目指したいです「それは何故?」』
話し終える前に言葉を被せてきた。怒ってるという様子じゃなく、ずっと表情は同じまま。
『私は、私を助けてくれたある人に恩を返したい。上のランクにいって、その人より強くなって頼れるヒーローになりたいんです』
ヒーローに成り立ての時はライバル心に近いものだったのに、いつの間にか目的は一緒でも心が変わっていた。
連れ出してくれなかったら、私は培養液に浮かぶバケモノ達の仲間入りだった。
はぐれても見つけた後は色々教えてくれて、与えてくれた。見放さず、しかも愛して。
「昇格希望、ですか。どうでしょう?アマイマスクさん」
2人のうち1人が話題を振る。
アマイマスクは、ふーん…と軽く頷き、隣に座るもう1人の机をトントンと叩いた。
「あっ、ではこちらの精神分析のマークシートに入力をお願いします」
難しい問題ではなく、簡単な精神テスト。
椅子だけぽつんとあったので、3人がいる机で書く事にした。これも何か判断する方法かもしれない。人の目の前ではなく、人と人との間の机上、ペンを借りて記入する。
マークシートを書き終わり、ペンを置いた所でシートは回収されてしまった。見直しするものじゃないから別に良しとは言え、無駄に緊張させる。書き物をしてる時に3人に見られるとかプレッシャー以外の何者でもない。
シートをクリアファイルに入れ、じっと見られる。
「うん、おめでとう。君は今日からS級ランカーの仲間入りだ。君の順位は最下位となってしまうが、S級18位。
これからもヒーローとして誇りをもって活動してくれたまえ」
『あ、有難う御座います!』
やった…!最下位からのスタートとは言え、S級に来る事が出来た!
早く、サイタマやジェノスに伝えたい。フブキにチャレンジするものだと教えてあげたい。そして、ゾンビマンにも連絡をしてS級になれたって言いたい。
そうだ、童帝とも連絡交換してたから言わないといけないなぁ。
足取りは軽く、会場から出て直ぐに建物の屋上を跳ねて私は移動をした。