第51章 49.
電話をかけるか迷い、気付けば面接の前日の夜、11時。
寝間着で自室のベッドに腰掛けて携帯を覗き込む。
掛けようか。でもなんて切りだす?そもそも寝てるんじゃないだろうか?いや、起きてるでしょう、あのゾンビマンだし。時間を改めた方が良いかな?ああ、でもなんだか声が聞きたくて寂しくて、今すぐこのボタンを押してしまいたいな。
1人葛藤し、画面の明かりが消えてはまた着けての繰り返し。恐るべき、不治の病。
ああもう、こうなりゃヤケクソで掛けてやるっ!一か八かだ、向こうが出たら考えながらで良いや!
アドレス帳の通話ボタンに親指を一度押し付ける。電話のコールが始まって、手がなんだか冷えて少し震えた。頑張って耳に押し付けて気を紛らわす為にコール音を数える。
3回目、4回目、5か…
「はいよ、今回こそ出たぜー」
コール音5回目で呑気な声が聞こえてきた。
あ、出てしまったというちょっとした後悔と緊張と、声が聞けた嬉しさで何とも言えない気持ちになった。
もしもし?といつまでも喋らない私に、ゾンビマンは話し掛ける。
『遅くにかけて、ごめん』
「あ?大人にとってこんな時間は遅かねーよ、むしろこれからだ」
いつまで起きてるつもりなんだか。寝ろ!と言いたいのを胸に仕舞って話題を探す。
そうだ、面接。声が聞けるついでに聞こう、そう思って電話に手を伸ばしたのだから。
「で?どうしたんだ?まさか寂しかったとかか?」
『べ、べっつに寂しかったわけじゃないし!寂しいくらいで電話とか…。それより別れ際の見られたアレ、どうすんの!からかわれて大変なんだけど?(主に私が)』
嘘をついた。
寂しかっただとか悟られたくはない。本当は寂しかったくせに。
また強がってしまった、と口を閉じてから後悔した。弱いと思われ無くない、だから強がる。なんでこう、私は素直に慣れないんだろう?
電話の向こうでクク、と笑う声。
「俺はな少しばかり寂しかったぜ?というか、キスくらい見られたって良いだろ、お前は俺のモンだし」
ボッ!っという音が出るくらいに顔が一気に熱くなる。電話で良い事は顔が見られない事、顔が見えていたらきっと笑われていた。