第50章 48.
「それこそお前、俺達より恋人に聞いた方が早いんじゃね?」
『は、こいびと…!?』
手から手紙が箱に向かって落ちる。
2、3日会ってない奴のニヒルな笑みを浮かべた顔が浮かんで、別れ際にあった強烈なキスを思い出してぶわっと顔が熱くなった。
ああ、もう!あいつのせいでなんでこうなる!これが恋なのは自覚した、けど恥ずかしくならない方法はないのか!平常心、平常心…。
慌てふためく私に、多分茶化すだけのつもりだったのだろう。言い返さずに予想外の反応をした私に、サイタマは壊れない程度にフローリングを叩いた。
「……クソ!リア充爆発しろ!人前でイチャイチャとちゅ、チュウなんかしやがって!」
「先生、チュウじゃなくて正式名称はキスですよ。もしくは接吻とも言いますが、」
「うるせー!分かってるわ!言う俺が恥ずかしいの!」
あわあわと両手で熱い顔を両側から挟んでいると、私からだんだん話が逸れていく師弟。いいぞ、もっともっと話を逸らして!
「先生ともあろう方が、キスという表現を恥ずかしいというのですか?」
「うるせぇ!ニートで彼女も居なくてハゲたら女も寄りつかなくなった俺に誰がチュウするんだ!」
「え、未経験だったんですか!?……では、先生のご希望に添えるか分かりませんが俺でしたらいくらでも、」
「異性!い・せ・い!!俺は男に興味ないって言っただろーがジェノス!」
「サイボーグですのでギリ大丈夫です、男性器は付いておりません」
2人がやたらと騒がしい。話が大きく逸れた事は良いけれど内容がなんとも怪しい方向に飛んでしまっている。大丈夫だろうか?
熱も去って、ファンレターを読み始める頃、しょんぼりとするサイタマをジェノスが必死に励ます。その内容が不憫で苦笑いが漏れて話が元に戻ってしまったのは言うまでもない。