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風雷暴見聞録

第48章 46.


****

到着だな、と部屋のドアが並ぶ通路で立ち止まる。

「寂しくなったら電話でもメールでも何でも良いからしろ。電話は出れない時もあるし、メールは返すのが遅れるかも知れないが、ちゃんと返事はするからな」

私の頬に手を触れ、優しく撫でる。
少し屈んで近付くので、私も半歩近付く。

瞼を閉じて、背に手を回された。頬に触れていた手は後から私の後頭部へ。
触れた唇は熱く、しかも今度は今までとは明らかに違ってぬるりと舌が侵入してきた。
驚いて目を見開くと、勝ち誇ったように笑う緋色の瞳。

離れようと藻掻いても男と女の差か。運動嫌いだとかいうのは本当かと疑いたい。背と頭に回された手がビクともせず、ひたすらに私の口内を荒らしていく。さっきの煙草のせいか、苦い味がする。貪欲に私を貪る眼の前の男。

『ひゃめっ、…っ、……っ!?』


止めろと言いたくても発声器官でもある口がこんな状態じゃ上手く言えやしない。呼吸も上手く出来ずに酸欠気味な私を支えながらも角度を変えて攻めてくる。
抗う?
そんなことどうでもいいや。大好きな相手だし、この人なら………、いっそ…、


ガサ、という音が聞こえて私の思考は現実に戻る。丁度私の目の前がゾンビマンで、見えない。ゾンビマンのその後ろから気配がする事にやっと気が付いた。風を僅かに吹かすと2人。こんな場所に居る人は限られる、つまり。

「おい、お前らイチャつくなら狭い通路じゃなくてハルカの部屋かそういうホテルでやれよ、見せ付けんな」

緩くなった拘束から抜け出し、口から零れた自分かゾンビマンか分からない液体を急いで拭う。
ああああ…っ見ら、見られ…うわぁ…、サイタマとジェノスまだ部屋に帰って居なかったのか、ちょうど今帰って来たのか…!
じわじわと顔面に熱が灯り、公開処刑は御免だと通路の隅で座り込んで両手で顔を隠す。

「おいおい、なんとも可愛い反応だなンゴフッ!?」

からかう声が呻く声に変わった。私はやっていない。おそらくはジェノスの仕業だろうか。
腕や肩、背中まで熱が灯る。変な汗も出てきた。
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