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風雷暴見聞録

第48章 46.


戦う時の高鳴り以外は"恋"なんだそうで。原因が分かって、成る程!と思ったけれどこれが恋…そうなのか…という新たな発見の気持ちと。
更にゾンビマンもそうなんだと思うと恥ずかしさが入り交じる。
気持ち的には原因が分からなくて苦しかったけれど、確かに胸を押さえてのたうち回るような痛さでは無かった。ほっとした。

『疑ってごめん。しばらくゾンビマンと離れるのが寂しいって思っていたのと、ここまで来る時何も話さなかったから嫌われてるんじゃないかとか…変な考えになってた』

抱きしめるのを止め、少し壊れががっている塀に2人、背を預けた。
ゾンビマンは安心したのか、もう一度煙草の箱を取りだして、ライターで火を付けた。
でもまあ、いくら死なないとは言え少しは禁煙に取り組んで欲しいとは思う。煙たいし、服に香りが残るし…キスをした時にほろ苦い。

「そいつはありがたい。俺はハルカにそんなになるまで愛されてるって事だろ?」
『そういう事なんでしょ』
「それじゃあ、俺達は恋人って事で良いよな?これで他の男に取られる心配も無くなる」

ふぅ、と煙を空に吹き横目で私を見るゾンビマン。

「そうだ、この際、お前に一つだけ頼みがあるんだけど聞いてくれないか?」

何か思い出した様に、そう言った。

『どんな頼み?変態的なのは勘弁してよね』
「ん?変態的なことを期待してたのか?」
『誰が期待するか、誰が』

変態的ってどんなだよ、と小さく笑う。
もしも。そのうちこの関係に慣れ、私も大丈夫になったら少しは考えるかもしれない。こんな私で良いのなら。

「俺と一緒の時は、出来たらゾンビマンだなんてヒーローネームじゃなくて、66号って呼んでくれ。俺にとっての名前はそれだ。この名前を知ってるのは博士やお前くらいしか居ないだろ?お前との最初の繋がりなんだ」

流石に一般人の前とか他のヒーローが居るところでは言うなよ?とっておきの名前がバレちまうからな、とゾンビマンは声を出して短く笑った。
私が来る前から66号は進化の家に居たんだろうか。本当の名前は、教えられない?それとも知らない?私よりも、この人はとても辛い思いをしていたんじゃないだろうか。

じわっと溢れてきた涙をなんとか堪えながら、となりで塀に寄りかかる彼の手を握り、私は黙って頷いた。
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