第4章 2.
──そこには不健康そうな青白い肌に黒い短髪、そして血のような瞳の……糸くず一つ身に付けていない、良い体つきの男が立っていた。
しかも凄く驚いたような表情をしている。こっちが驚きたいくらいだ、変態が。
こんな所に人間が居るわけがない。ましては全裸となると異常だ。川のせせらぎと遠くで鳥のさえずる声、そして草木を揺らす風と共に動きの止まった男の一物がわずかに左右に揺れた。
『なんだ、次から次へと怪人か?お前の名前はどうせ怪人フルチン男だろ?残念だったな、変態怪人の命、ここで終わらせてやるからな、来世は服を着ろよ』
哀れみを感じながら体内に巡る電気を手に集中させ、赤い瞳を睨む。
「…あっ!お、おい待て待て待てって!俺は怪人とは違っ、」
両手をこちらに出し、制止を求めるが首や手を動かすと当時に一物が振り子のごとく揺れて苛ついた。
5本の指先から放つ高電圧を腹部に向け流し込み、蹴りを一発急所(おそらくは名乗りを上げていない怪人の名前の由来の場所に)にブチ込んで、成敗完了。
さて、さっさと私の相棒を組み立て直してここを去ろう。2度ある事は…というからな。3体目を相手にしたら余計に腹が減る。今は何があるか分からないから温存しておきたい。
「──チィッ…話も聞かねぇで殺しやがって…!普通女だったらフルチンなんて言わねぇし蹴らねーだろ、致命傷じゃねーコッチが痛てぇ!」
振り向くと、片手で急所を抑えた怪人フルチン男が居る。確かに致命傷を与えたハズだった。手加減なんてしていないのに。
私は再び相手に手を向けて質問をする事にした。最悪、この場から逃げ出す事も視野に入れて。
『おかしいな…お前、何故死なない?』
特定の場所にダメージを与えないと死なない怪人だろうか…意思の疎通が出来るので話をさせる。
一歩踏みだし相手に近付く。もしかしたらうっかりやな怪人で弱点を言うタイプかも知れない。割とそういった怪人はありがたい。
喋るフルチン男はもう片方の手をこちらに突き出し、私の攻撃を止めるよう、制止した。
「俺は死なない。死ねない体を持つヒーロー"ゾンビマン"だ。怪人じゃねーよ」