第44章 42.
「ほれ、残すんじゃねーぞ、全部食え、全部」
『食べるなら自力で食べたいんだけど……その方法はもうお腹一杯』
とても楽しそうにニヤニヤとしながら、ゾンビマンはパフェを食べさせて来ようとしてくる。
1人でなら食べられたものを、その一口一口を全てゾンビマンが掬い、口をあけた私に食べさせる気だ。吐き気を催す程に甘ったるい。まさにゲロ甘いとはこのことを言うのか…
糖度が高いものに耐性があるなら、私ではなく自分で食えば良いのに。
時間の経ったパフェのアイスはすっかり溶けてバニラソースと化し、シリアルはサクサクではなくふやけている。冷たさが去ればパフェは本能を剥き出す。甘さの暴力だ。
それが余計に食べる気を失せさせた。
ああ、もう!残りも少ないしさっさと終わらせてしまおうと私は口を開け、そこにスプーンが入った時だった。
「……ちょっと何やってんの?僕にわざわざ見せ付ける為に呼び出したの?恥ずかしくないの?」
『…む、ぐ』
口内に突っ込まれたまま手を離すゾンビマン。
これがチャンスだと私はパフェを引き寄せる。寄って来ていた少年から私に視線が戻ったゾンビマンは小さく舌打ちをする。
勝った…!ニヤリと私は笑みを浮かべ、小さくざまあと呟いた。
「そうしたいが残念な事に本題は違う要件だ、童帝。呼びつけてすまないな」
この子が童帝か。まだ子供じゃないか…
しかもS級ヒーロー。人は見かけによらない、とはまさにこのことか。そう驚いていると、ゾンビマンから視線が私へと移された。
「風雷暴のハルカさんだね。噂は聞いてるよ、今の君の調子なら、僕達S級ランクに来れるんじゃない?A級トップのアマイマスクさんにも噂するほど印象良いらしいし」
バチンと硬めを瞑り、隣座るねと言って私側の座席に座る。通路側に背負ってたランドセルを置いた所でゾンビマンが話を切りだした。
店内に入った事だし、メニュー表を童帝の方に置くとニコリと笑って有難う、と言われた。良い子だ。