第43章 41.
「俺はいいんだよ、だがお前がどうしてもってならひとくちくらい貰ってやっても良いぜ?」
『はあ…ひとくち…。じゃあ新しいスプーンと小皿を、』
そこまで言いかけた所で頬杖を止め、姿勢を正したゾンビマン。
何故か顔が真剣だ。何が彼をそうさせるのか…ピシッと私の手元を指差した。
「おいおいおい、そこは"お前の今使っている"スプーン!で"ハルカ自身が!"掬って、俺が口開けるから"ハルカが!"俺に食べさせる、だろ?」
『そんな必死に訴えなくても…』
そんなにムキになって強調するなよ…と呆れつつ、ため息を吐きながら言われるがまま、スプーンをパフェに突っ込んだ。
突っ込んで今更気が付いた。
『私がゾンビマンに食わせる、と?その、痛々しいカップルがやるような食べさせるアレを、私が?』
箸が使いづらい時期に食わすと言っていたあの件を思い出す。
他にも膝枕で耳かきだとかそういうのもあるらしい。
全く持って縁がないな、と以前雑誌で読んだ事があった。まさか私がやる事になるとは。
ゾンビマンはそうだ、と返事をして口を開けてスタンバイしている。
──まさかとは思うけど、コレの為にわざわざ自分の物頼まなかったんじゃないだろうな…?
疑いつつも恐る恐るアイスやチョコソース付き生クリームが乗ったスプーンを、ゾンビマンの口に突っ込んだ。
口が閉じられるのを確認してスプーンを引っこ抜く。
「クッソ甘ェーな…よくもその量食えるな」
『甘いモノが苦手なら変な手段を使ってまで無理に食べないでよ……』
鼻でフン、と目の前の男は笑った。
「俺がいつ甘いものが苦手と言った?ほれ、俺のコーヒー飲んでみろ」
コーヒーカップを私の前に差し出す。あまり得意では無いんだけれどな、と少しだけ飲んでみた。
その良い香りを放つ黒い液体が私の口内に入った時にギャップを感じ、咽そうになる。
『……ン゛ッ!!』
もはやそれを例えるのならば、渋い見た目でパフェ以上だった。糖分が。舌にしがみつく糖の暴力だ。クッソ甘ェーな、とはそちらに言うべき言葉なのでは?とカップを目の前の男側に押した。
勝ち誇った表情でカップを私から受け取り、一口すするゾンビマン。あんたは何を勝った気になってるんだ。
「このコーヒー1杯にはな、角砂糖8個分が含まれているんだぜ?」
『死なないからって不摂生すぎる生活では…』