第39章 37.
資料を置いて、サイタマもキッチンへと向かう。キッチンでジェノスとサイタマが蕎麦のトッピングがネギの他に何があるかと相談しあっている中、リビングには煙草を強制終了されたゾンビマンと私が取り残された。
「ホントはよ、この家じゃなくて外へ一緒に飯食いに行きたかったんだがなぁ、ほら、飯奢るって言ったし。どっかの照れやさんが強引に帰宅するっていうからなー…」
『う、煩い!とりあえず私のクローンについて情報交換とかしておきたかったんだし!』
そもそも、先ほどの路地裏での出来事を思い出してみろよ、と言いたいのをぐっと我慢して飲み込んだ。
下半身のアウトな部分に手の伸ばしてたコイツは隙あらば食う。性的な意味で。その時は川で久しぶりに会った時みたいに遠慮無く潰そう。
『……でも、話し合った後お茶飲みにくらいなら付き合ってやっても良いよ』
「おう、じゃあそうしてくれ」
待つ時間、煙草も吸えないゾンビマンはよそ見もせずにずっとこちらを見ている。
目の前の席に座ったわけじゃない。サイタマの部屋の机は正方形で、普段ならサイタマとジェノスが向かい合って食べていて、空いた所に私が座っている。
ゾンビマンはジェノスが座る所に座っている。それが理由かは分からないけれど、キッチンからゾンビマンに飛ばされる視線は鋭い。
めんつゆの匂いが強くなってくる。そろそろ出来上がったみたいだ。
「よし、出来たな。俺とハルカの分持ってくからジェノスは自分の分とゾンビマンの分持ってけ」
キッチンでカチャカチャと鍋やおたまを片付ける音。
サイタマの横に並ぶジェノスは「はい、了解しました」と返事をする。少し口元をつり上げながら。
「ほらよ、ハルカの分な」
『サンキュ』
そんなやりとりをしている横で、ジェノスも2人分の蕎麦を載せて私の目の前の席に座る。
ドン、と威勢よくゾンビマンの前に器が置かれる。少しつゆがこぼれた。
「貴様の分だ」
「おい、指入ってるだろ」
ジェノスの指がしっかりと浸かっていた。しかも自分の分ともに。文句を言われることを見越してやったのだろうな、体を張っている。
「こっちが良いのか?」
「おいおい、両方親指浸かってるじぇねーか…」
コントのようなやりとりをしていた。
寒かった気持ちは再び、温められていった。