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風雷暴見聞録

第38章 36.


「そんなに急いでどこ行くんだ?」
『部屋に帰る。買ったお土産渡したいし…
あんたといつまでも一緒に居たら、気が付いたら孕んでいそうだ……そいつは御免だね』

危険区域まで来た。流石にヒーローがそんな事口走ってたら一般人が振り向くだろうに、一般人が居ない。
しっかりと知識が蓄えられている事に感心して、鼻で笑ってやった。

「孕む?良いんじゃねーの?俺はお前との子供なら大歓迎だ、10人くらいボコボコ作ろうぜ!」

漸く振り向いたハルカは真っ赤で、俺の脛を思い切り蹴って再び背中を見せる。
素直じゃないけど、泣き顔よりずっとずっと良い。この痛みもご褒美だと思えてきた。性癖が開拓されそうだ。

『…んのっ、変態!豚箱に入ってろ!二度と出てくんな!』

さっきよりも赤い。これはめちゃくちゃ可愛いじゃねーか。
ジーナスの事で吹っ切れたのか、感情を良く出す。ただ、俺は笑顔をまだ見れていない。同居人であるあいつらに聞いたのは笑顔を見たという情報と、涙を流すほど笑った事があるという事。ああクソ羨ましい。

「俺をいくら蹴っても殴っても殺しても良い。俺はハルカが好きだし、それもお前の不器用な愛情表現だと思ってるからな。
ただ、俺から言いたい事が1つある」

ズンズンと進めていた足を止めて、俺を振り向いた。
ちゃんと聞く姿勢だった。

『何?』
「俺はちゃんと言ったろ?愛している、とお前が好きだって事。なのに不平等だよな?俺はハルカからどっちの言葉も貰って無いんだぜ?
言えよ、ハルカ。お前が俺をどう思っているかを」

ニヤリと笑ってそう言えば、少し嫌そうな顔をするハルカ。

『私に、言えと?』
「出来れば今言って欲しいもんだね。それとも俺達以外の人が居る空間で言いたいか?同居人達の前で言質としてか?街中で祝われムードの中か?独占取材でか?そういうプレイが、」
『ちょっと黙れ』
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