第4章 2.
痛みの残り続ける博士の実験もだんだんと何も感じなくなり、いよいよ私も周りのガラスに閉じこめられた"蠢く気持ち悪いモノ"にでもされるのかな、と死をも覚悟し始めた頃だった。
私よりも年が上の様だった66号が、脱走すると事前に教えてくれた、…ような気がした。
気がしたっていうのは…電気コードに繋がれてバチバチと電気に満たされた心地よさに、私には睡魔が襲っていた。部屋の薄っぺらい掛け布団よりも、電撃は暖かくて皮膚が程よく痺れて猛烈に眠たかった。
私に揺すって「脱走」「破壊」…断片的な単語しか拾えなかったけれど何度も言ってたからだ。時々66号は私に流れる電気に痺れていたり、なんだか焦げ臭かった。
──それで爆発音がして、「早く逃げろ!」って誰か叫んでいた。誰かに服の袖を強く引っ張られ寝起きの頭で突っ走って…目が冴えてくる頃には1人で。研究室ではなく外に居た。
あの叫び声は脱走を企てた66号なのか、養子として引き取った博士の最後の養父としての態度なのか、私の幻聴なのか。今では66号の行方も、博士の安否も分からない。そう、またまた孤独となった瞬間だった。
何度か経験した温かい気持ちとはなんだったのか。冷え切った自身を抱いて、まだ少女であった私は独り早朝の森を彷徨う。
籠から出してくれた66号や、その籠となっていた施設の正体を知る事もなく、それ以降私の繋がりというモノは全て無くなってしまった様だ。温かい気持ちは日に日に冷えていく。
それからだ、何処に行く宛ても繋がりもなく、彷徨い続けているのは。
空腹でさっきから腹の虫が騒いでいるし、多少湿っててもいいやと下着を身につけ、服を纏っていく。
最後に手足に2カ所ずつの電気抑制ベルトを…という所で、川から怪人が飛び出してきた。