第36章 34.
ほら、行くぞ。掴まれた手の手首を掴んで私は靴を履いて外へ出る。
そう言えばゾンビマンは私の簡単に穿ける靴とは違って今日は編みブーツだった。後ろで焦ってもたもたしてるのが分かる。
私は茶の間から一切、ゾンビマンと博士を見る事なく、外へ出た。
やっぱりだ。
博士はまたおいで、すらも言ってくれなかった。
私はやはりひとりぼっちなんだ…
「あ、ハルカさん!ちょうど出来ましたよー!」
ガサガサと音を立てて袋詰めするゴリラ。
千円じゃ足りないから二千円を渡して、お釣りは要らないとその場を立ち去る。
「ありがとうございました!また来て下さいね~!」
『……──。』
なにも言えなかった。どうして。ゴリラの方が博士にとっての今の家族なのかもしれない。
本当は、私が…。本当は私のほうが。
たこやきはゾンビマンに持たせ、空いた方の袖を掴んで街を進む。
「おい、ハルカ…」
耐えられなかった。
時折視線を感じる事もあった。街を走り、もう限界を感じた。このこみ上げる何かを吐き出してしまわないと、私の中で溜まりに溜まっておかしくなってしまいそうで。
路地裏に入り、何度か曲がる。人の気配が全くない。人だけではなく、怪人も。騒音も少ない。
私は急いでいた歩調をゆっくりにし、やがては止めた。止めると同時に袖も放した。
少し呼吸が乱れる中、ゾンビマンは苦しそうにゼーゼーと呼吸を乱していた。
「…運動は苦手、だってのに……走らせ、やがって!」
呼吸が落ち着く頃、私の呼吸は違う意味で乱れてきた。
そうだ、サイタマやジェノスの前でなった様に。私は、泣きたかったのだろうか…?
「……ハルカ?」
私の肩にポンと置かれた手は温かい。寒い心と体が落ち着くような温かさだった。