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風雷暴見聞録

第35章 33.


少し驚いたような、そして嬉しそうにこの場から去っていった。丁度良い温度になったお茶を飲んでいると隣でシャリシャリという音が聞こえる。
ゾンビマンを見ると頭を掻きながら「俺はゴリラ以下かよ…」と呟くのを聞いて吹き出しそうになりかけた。とっさに手で押さえなかったら吹き出して悲惨な事になってたな。
……でも、まあ…その気になったらゾンビマンに普通に接してあげよう。

「その資料は好きにすれば良い。私の数ある研究資料の中で風神・雷神シリーズにおいては、唯一持ち出したのはそれだけだよ。資料の片方だけでもあるだけマシだろう?
それに今資料が一番必要なのは、私ではなく君達のようだ」

資料をさらさらと捲るゾンビマンと、捲るスピードが読ませない速さなので目で資料の雰囲気を見る私。
資料というからてっきり文章とグラフだと思っていたのに、当時の私の写真もあった。普通の家庭に大体あると言われているアルバム。
幼い自分は全てが楽しそうな写真ではなく、痛みにしかめる顔、絶望、ボロボロの体、流血、全裸に電気コードが幾つも繋げられたもの…
他の人達のいう思い出のアルバムとは明らかに違う、私の悲痛なアルバムだった。

名前は知らない人ではあったけれど、助けた際に泊まらせて貰ったおばさんにアルバムを見せて貰った事がある。
世間では入学式とか卒業式、運動会、日常で写真を撮って保管している。そのアルバムでは笑顔が絶えなかった。笑顔じゃなくても真剣な表情だったり。
年齢的に息子、ではなく孫といった感じだった。少なくともそんなアルバムの表情に無い、私の顔。
私には家族の暖かさも、絆も、学生という身分もなく、友人も恋愛も、青春というものもなかったのだ。

余りにもかけ離れすぎたアルバムに、胸が苦しくなった。
よく、こんな異常なものを残したもんだ、とある意味関心した。そして、養父というモノに幻滅した。

「キミの事だから全部読むまでには飽きてしまうだろう。
……もう1人のハルカは既にリメイク済みだった。私の鬼のイメージに沿い少々ただれたような見た目…けれども、一部は正常な肌なんだ。
その部分もリメイクする所で君達の脱走に便乗して逃げ出してしまった様でね。私にも、居場所は分からないよ」
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