第35章 33.
『お、お久しぶりです、ジーナス博士。今日は聞きたい事があってここに来ました』
77号だった時に向けていた視線は感じない。興味とか材料っていうよりもちゃんと人として、"ハルカ"としてもう一度見てくれているような感じがする。
私は人として探るように博士を見ながら、言葉を待つ。
「……なんとなくだけれど、聞きたい事は分かるよ。君自身の事についてだろう?」
ハルカに教えたんだろう、ゾンビマン。博士がそう言うとゾンビマンはそうだ、と短く返事を返す。
「そのハルカのクローンについて知ってる事、洗いざらい話せ。ハルカも立派にヒーロー活動してるのはあんただって知ってるだろ?その活動に支障が出たらどうすんだ」
博士は少し困った表情をして黙った。聞いてんのか?とゾンビマンが返事を急かしてようやくああ、とだけ返事を返す。
何か、私達が想像している以上に危険なのだろうか?それとも密やかにここでも実験を続けてるとか…?
「アーマードゴリラ、資料を持ってきてくれ。風神・雷神シリーズと書いてあるファイルなんだが…」
「はい、直ぐにお持ちします」
座ってこの3人の様子を見ていたゴリラ。博士に話し掛けられビクリと体を揺らし、直ぐに立ち上がって何処かへ消えていく。
少し遠くの部屋で物音がして、小走り気味な足音が近付いてくる。ジーナス博士は整理整頓をしていた人だったから、探しやすかったんだろう。
「はい、コチラです」
ゴリラがテーブルの真ん中に持ってきた物を置く。博士や私は手を伸ばすことなく、ゾンビマンが先に手を伸ばした。
ファイルされた物が1冊。横から見ると2センチいくかどうかの厚み。ファイルの背と表紙には"風神・雷神シリーズ ハルカについての資料"と書いてあって、名前の下に"77号"と付け加えられていた。
『有難うゴリラさん。帰りに、たこ焼き買ってくね』
ジーナス博士に仕えているこのアーマードゴリラ。普通のゴリラは喋らない。ジーナス博士によって作られた、私達みたいなもの。
たった1人(1匹…?)博士に付いてきたのだから信用もあるんだろう。
「あ、はい!有難う御座います!じゃあ私直ぐに持ち帰れるように作っておきます!」