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風雷暴見聞録

第34章 32.


「ここだ」

たこやきの家。
なんて無害そうな建物なんだろう。ファンシーさを感じる。本当にここに、あのジーナス博士が居るのだろうか?

私が初めて孤児院以外の建物に来た、あの日。森の中にその施設はあった。
ゾンビマンと脱出してはぐれ、戻ってきた時はボロボロだった。研究が研究なだけに人目につかない森の中だったんだろうか。
それが、たこやきの家は街中にあった。昨晩食べた美味しい香りを振りまく店員。

『ご、ゴリラが…たこ焼きを作ってる…!?』

先ず第一にその言葉が私の口から飛び出した。
店員がゴリラなのだ。いや、ゴリラみたいな男とは良く例えにあるかもしれないけれど、まんまゴリラなのだ。全体的に黒くて体毛フサフサ、ゴリラ目ゴリラ科の完全なるゴリラゴリラゴリラなのだ。
そのゴリラが檻に居る訳でなく、店でたこ焼きを器用にコロコロコロコロ転がしている。頭には立派に鉢巻き。着ぐるみではない!

「お前そんなに驚くなよ…」

店先でそんなやりとりをしていたからか、ゴリラがたこ焼きから視線を私達に移す。
ドラミングでもするのか…?アレを投げるのか…?芸達者でも客人が気にくわなかったら威嚇するかも知れない、ゴリラの飼育係は不在なのか…!?
…と、本物のゴリラに少し興奮する私の予想を覆すのは、やはりゴリラだった。

「あっ、ゾンビマンさん今日もお買いあげですか?」

キョロッとした目でそう言って、ゴリラは私を見るなり「今話題の風雷暴さん!?」とまるで人間のように驚いた。
そのゴリラの問いかけにそうです、風雷暴のハルカです、なんて肯定する前に。

『喋った…!ゴリラが喋っ…はっ、まさか怪人の類じゃ…!?』
「お前、ちょっと落ち着け。あいつはジーナスが作ったアーマードゴリラっつーサイボーグだ。あんまりそんな対応するとゴリラも傷つくだろ。
おい、ゴリラ。博士は今居るか?」
「(一番あなたが酷いんですけどね)」

ゴリラにゾンビマンが話し掛けると、「はい!上がって下さい!」と答え、ゴリラはちゃんとたこ焼きが焦げない様にスイッチを切って裏へ消えていく。
しっかりとした性格のゴリラのようだ。
ほら、行くぞとゴリラの後に続くゾンビマンを私は追いかけた。
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