第31章 29.
「今日、ジーナスに会ってきた」
「(あの進化の家は俺が殆ど焼却したんだがどうなったんだ…?再建したのか?)」
風呂上がりのサイタマはゲームに飽きたのか、テレビをつけて時々こちらを見ている。
サイタマが風呂から上がったのでジェノスが浴室へと向かった。
ジェノスはサイボーグではあるけれど、風呂やシャワーを使う。戦うとどうしても砂埃等が舞う。なので、洗い流す為だろうか、シャンプーもきっちりするみたいだった。
錆びたりしないの?と聞いた事がある。防水仕様だから大丈夫だけれど、破損して電気がパリパリ言ってる状態は流石に入れないのだそうだ。
と、ジェノスの背中を見届け、ゾンビマンに視線を戻す。
ようやく視線が合った、と言うか俺の話聞けよとでも言うのか。煙草の煙が含まれたため息を吐かれた。
「本当、お前なんとも思ってなかったんだな…」
『一目会うくらいで良い、くらいだが?』
別に私自身が養子でも向こうはなんとも思ってないだろうし。
どちらかというと、ここにいた方がとても良い。サイタマとジェノスの2人の方がずっとずっと良い。母のような父のような兄弟のような、温かな関係だ。
私はまだ熱めの湯飲みを、両手でぎゅっと包んだ。
「そうか…
ジーナス博士な、もう研究辞めたんだとよ。今はたこ焼き店っつーのをやっている。野望は消えたんだ、もうお前に酷い事はしねぇ…一応、お前に伝えておきたくてな」
『…そう、か』
掌が熱で痒い。湯飲みから離して私は腕を組んだ。
ふと目に入れたテレビ画面には鬼サイボーグだとか風雷暴だとかヒーローが出ている。あ、ゾンビマンも出た。番犬マン?ああ…危ないイラストの犬とはこのヒーローか(あの時はてっきり獣姦かと思った)
テレビ画面から目の前の湯飲みに視線を移し、口を開いた。
『その内、ジーナス博士を遠くから眺めて帰る。3秒くらい見て』
「3秒かよ…なんとも思わなすぎだろ…」
目頭を押さえるゾンビマン。
灰皿は無いので、ゴミ箱から持ってきたであろう空き缶に、指先で灰をトントンと落とした。
「良いんじゃねーの?ハルカがそう言ってるんだし。その博士の所で嫌な事があったんだろ?戻りたくないってのが普通じゃねーのか?」
「……それが、そうもいかないんだぜ、ハゲマント」
「ハゲマント言うなや」
真顔でそういうゾンビマンにサイタマは同じく真顔で反論をした。