第31章 29.
『下心しか見えない。かつて怪人から助けて泊めてくれたおばさんに言われたぞ?"男の夜の散歩と先っちょだけだからは絶対に信用するな"ってな。
昼間にしろ、変態ゾンビ。それに話なら電話でも出来るだろう?今日こちらから電話を掛けたってのに出ないのは何処のどいつだ?携帯を携帯しろ』
「……おいハルカ、口より手を動かせ。鮭が焦げる」
ジェノスに言われて視線を下に戻す。鮭の切り身をそっと裏返すとまだ悲惨な事にはなってなかった。全部ひっくり返す。
大体夕食を作るのはジェノスと私。時々、ジェノスが任務という場合はサイタマが一緒になって料理をした。一緒にやればそれほど注意される事もなくなってきたのは良いけれど、この後に1人で過ごせと言われたらそれは寂しいような気もする。
「チッ(ババァ余計な事を…)…よし、じゃあ明日の昼間っからで良いか。約束だぞ」
頬杖をついて、ニヤリと笑う。
なんか…ゾンビマンが少しだけ以前より変わったような気がした。まるで何かに吹っ切れたような。
キングに正式に借りたであろうゲームを、サイタマは飽きずにやっている。
視線は画面から離れる事はなく、「ゾンビマンお前泊まってけば?」と嫌な提案をしているのが聞こえた。それに対して「おう、助かる」とか最悪の答えも聞こえた。
そういえば食事の準備、鮭の切り身が4つなのがおかしい。ジェノスに助けを求める視線を送ったけれども、ため息と頭を横に数回振ったのでこれは仕方のない事なんだな、と我慢する事にした。
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食事を終えて洗い物を済ました後、ゾンビマンが煙草を吸いながら「そういえば、」と私に話し掛けてきた。
お茶が入った湯飲みが熱いので、私は触れたり離したりを繰り返していた。サイタマやジェノスは平気なのか、熱々のお茶を平気で飲んでいるのが不思議だ。
もっともジェノスは手の平から炎を出すけど。