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風雷暴見聞録

第30章 28.


ジャー…というトイレが流される音。
小さくふう、とため息を吐いた私だけれど、悲劇というものは私を見逃さないらしい。
いつまでもドアが開く音がしない。
パサッ、という音と共に半分ほどカーテンを開けられ、完全に目線が合ってしまった。視線は顔から下を舐めるように見ていく。それは私の裸体、全てを晒した状態だった。

「お、おいお前入ってたのかよ…なんか気配がすると思ったらな、というかなんかその、しばらく見ねぇ間に肉付きがこうもなかなかに良い感じに、」

『ブ チ コ ロ ス』

パキンと指が至近距離で弾かれ、カエルの様に後ろへと吹っ飛んでいくゾンビマン。
ドアをブチ破り、廊下の壁に激突した。

「おい、おめーら人ん家壊す気か!?何やってんだよ…」

大きく開かれたカーテンをさっさと閉め、残っていた泡を怒りながらシャワーで流す。
全裸で何が悪い。ここは浴室、全裸が当たり前なのに、そこをわざわざ覗く変態が完全に悪い。さっきよりも心臓が騒がしくなった。イライラしているんだこれは。脳の血管が破れて倒れたらどうしてくれるんだ、あの覗き野郎!
…うん、後で自分の部屋の風呂場を日常的に使える様にしよう。トイレだけは辛うじて使える状態だけど。長年使われていない浴槽の汚れはなかなかに厳しいものがある。

『この変態野郎、着替えの服があれば誰だって使用中って分かるだろうがっ!ドア壊れて着替え取れないから、とっととそこから退いてくれない!?』
「お、おう…すまん」
「(忠告したのに覗いたのか…こいつ)」

カーテン越しからそう言うと、サイタマも何かを察したのかそれ以上は言わず、ドアを立て掛けてリビングに戻っていく音。遅れて立ち上がった覗き野郎、ゾンビマンはリビング方面へと移動していく音。
廊下に誰も居ないな、と確認をして私は早々と着替えを済まし、リビングへと合流した。
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