第30章 28.
…話は逸れちゃったけれど、育毛剤入りのシャンプーの隣に私のシャンプーやリンスを置かせて貰っている。トイレにもまあ、月1の時のアレ用ゴミ箱とか。
鍵を締めるとトイレに入れない、という事なのできちんとカーテンを引いて体に着いた汚れや返り血を流す。
なんか廊下の方でバタバタと騒がしいな、と思いながら髪にリンスを馴染ませている時だった。
……この声、ゾンビマンじゃないの?あの野郎、電話に出なかったクセにいきなり来るとは…。シャワーで洗い流して、お風呂をついでに洗う。
シャワーを止めているせいか、リビングの会話が少し聞こえる。
「便所借りて良いか?」
「え、ああ…うん鍵は掛かってないから良いけど、余計な詮索はするなよ?(ハルカ居るし)」
便所借りて良いかとか。お前は外でしろ!いや外でして下さい。私がトイレと浴室のある部屋に居るので。
サイタマ、せめて我慢しろとか言って欲しい。今の私は完全にゼンラウーマン状態で、ゾンビマンの事言えないから。
近づく足音は、浴室の前で止まる。
がちゃ、という音に私は物音を立てないように動きを止めた。髪を伝う雫が空の浴槽の底に当たって小さな音を定期的に立てた。厚手のカーテンだから向こうが見えないけど、音は聞こえてしまう。些細な音でも今だけは大きな音に聞こえるような気がした。
カチャカチャ…
金属製の何かの音。ベルトを緩めたのだろう。
チィー、と言う音。チャックを下げた音。音だけで私にも動作がなんとなく分かる。
ごそごそ、という音。初対面で見てしまった股から垂れ下がったなにかを取り出しているんだろう。
シャアアァー、ジョボジョボジョボボ…
「ふー…」
ふー、じゃない!それからジョロジョロ音を立てるな!と怒鳴りたいのを我慢して音を立てずひたすらに固まる。耳を塞ぎたいが下手に動けば音が鳴る。髪に伝う雫はだいぶ間隔が遅くはなっているけれども、無音ではないから緊張する。
早く流してとっとと出てけ!
心臓がバクバクと煩い。もうちょっと静かにして欲しいもんだ。