第29章 27.
「ハルカか。彼女も風神・雷神シリーズで完成形に近い子だったが…そうか、君が連れて逃げたのか…」
刀を宛てられて尚、博士はまるで娘の成長を聞いたような父親のような顔をした。
…が、実際はそんな顔をして良いハズの無い事をあいつにした。虐待という言葉では収まらない。親ではなく科学者として実験体にしやがった。
「そうかそうか、ハルカもヒーローに…最近出ている子だね、なんとなく頭を撫でた時の表情にそっくりだと思っていたよ」
10年の間、俺も博士もどう生きてたかなんて知らねぇ。
久しぶりに会った時のあいつは冷え切ったような表情で。あいつらに預けたのが正解だったのか、少しずつ心を開いている。
直接ではなく画面越しに見る、あの少し照れたような笑みがとても懐かしかった。
「今更、父親顔するんじゃねぇよ。何処までも腹が立つ野郎だ…。
で、進化の家は何故消えた?貴様さえ生きていれば何度でも再建できるのに何故、それをやらない?答えろ、ジーナス博士」
「…」
──その日、俺は博士の研究が敗北した事と、研究所を潰したのが普通の人間という事を聞かされた。
ふざけた妄想か、と博士にぶつけるも、妄想ではなく真剣に考えた結果自分の野望の滑稽さに気付いたという事。
研究所を破壊した奴がハゲていた事、そしてなぜたこやき屋なのかという事。
俺の復讐という事が馬鹿らしく感じ、自ら刀と復讐劇の幕を下ろした。