第2章 横浜コーヒータイム
「こんにちはー!」
「姐さん!ようこそッス!」
左馬刻さんの事務所に遊びに来るようになったのはつい最近のこと。
横浜ディビジョンで流行っているコーヒーショップに向かっている途中で、チンピラっぽい男の人達に絡まれた事がきっかけだ。
『そこのお嬢さん♪俺らと一緒にコーヒーでも飲みに行かない?』
『……』
『ちょっとちょっと、無視しないでよ?俺らが奢ってあげるからさあ?』
『いえ、結構です』
『アァ?』
『なんだ?人がせっかく誘ってやってんのによ…』
こういう時はサラッと流すのが一番。
これ以上話すのは無駄だ。
そのまま無視して先を急ごうとすると、右腕をグイッと掴まれてしまった。
『い、痛ッ…!』
『このままおとなしく着いて来てくれるなら離してやっても良いぜ?』
『や、ヤダッ!離して下さ…』
こういう時のために護身術か何かを習っておけば良かった。
っていうか、まだ昼間なのに横浜ディビジョンの治安どうなってんのよ。
右腕に力を入れてもビクともしない。
私はただ美味しいコーヒーを飲みたかっただけなのに…
『グワアァッ…!?』
そんな事を考えていると、その下品なチンピラの一人がそれはそれは気持ちよく吹っ飛ばされていた。
『…テメェら俺様のシマで何暴れてやがる!!』
『て、テメェは火貂組の…』
『碧棺左馬刻様だこのボケがッ!!』
『ガハッ…!?』
もう一人のチンピラに長い足から物凄いスピードの蹴りが繰り出される。
それはもう見事な蹴りで。
『オイ、大丈夫か?』
『は、はい…!』
碧棺左馬刻…
どこかで聞いたような?
端正な顔立ちに色素の薄い髪。
『昼間だってのに災難だったな』
そうだ、横浜ディビジョンの超有名チーム…
MAD TRIGGER CREWの碧棺左馬刻さんだ。
『助けて下さってありがとうございました!』
『別にゴミ共を一掃しただけだ。気にすんな』
碧棺さんにそう言われるのと同時に安心したせいもあってか、先ほど掴まれた右腕がジンジンと熱くなってきた。
『オイお前、右腕見してみろ』
『へ、え?』
『赤くなってんな…痛むか?』
『あー…ほんの少しだけですけど。大丈夫ですこれぐらい』
『ウチの事務所に来い。手当てしてやる』
…事務所って。
確かMAD TRIGGER CREWの碧棺左馬刻の職業って確か…
ヤ●ザ…