第3章 大阪スイッチ(※)
ジーンズばかりだった普段着もスカートを履く機会が増えたように思う。
『まいちゃん、スカートむっちゃ可愛ええやん♪なんや今日はいつもより肌もキレイやな♪』
そう言って頬っぺに音を立ててキスしてくれる。
そんな簓さんをもっと見たくて。
でも、私は簓さんの彼女でも何でもない。
「何やってんだろ私…」
久々に吸ったタバコの煙が前よりズシンと肺に届いているような気がした。
タバコが残り半分という所で、大将が一服しにお店の外に出てきた。
「少しは涼めましたか?」
「はい。すみません、ご心配を掛けてしまって……」
「いえ、まいさんは休憩したらまた復活出来るから凄いですよね!僕は一回酔ったらもう駄目で…」
自慢ではないが、周りに比べると自分はお酒が強い方らしい。
「お隣良いですか?」
「どぞどぞ」
そう座りながら大将もタバコを吸い始める。
「なんだかこうやってタバコを一緒に吸うのも久しぶりですね」
「確かに、最近あまり吸ってなくて」
「どうしてですか?」
…それは、簓さんの影響で。
簓さんも元々は喫煙者だったらしいのだが、タバコを止めたと言っていた。
余程の事がない限りは飴などを食べてごまかしているようだ。
『口が寂しゅうなったら、こうやってまいちゃんにチューさせてもらうな♪』
そう言って頻繁に、簓さんは私の頬にキスをしてくる。
…そういえば簓さん、最初に会った日から口にキスをしてくれてない?
「まいさん?」
なんで今気付いたんだろう。
体を重ねてるのにキスしないなんて…
そんなの、そんなの…
「…完璧にセフレじゃない」
「え?」
そう言葉にしたら、涙が止まらなくなった。
「まいさん?どうしたんですか?」
「あ、ご、ごめんなさいっ…」
悲しい。
それと同時に、自分がこんなにも簓さんを好きだった事に初めて気が付いた。
大人なフリをして、余裕があるように見せて。
本当の自分はこんなに子供なのに。