第3章 大阪スイッチ(※)
いつの間にか頭の中が負のループでいっぱいになってきた。
そんな事を考えてたら、簓さんの出番は終わっていて、気付いたら生放送終わりの簓さんからラインが届いていた。
どうやら次の仕事まで時間があるらしく、一緒にご飯を食べようとの事だった。
二人きりで会う時は簓さんが芸能人という事もあり、どうしても室内が多くなる。
こんな昼間に外で会う事は滅多にない。
誘ってくれた事はとてもありがたいが、正直まだ少しだけ気持ちがモヤモヤしている。
既読をつけてしまったものの、文字を打つ気力が湧かない。
画面をメッセージ画面にしたままにしていると、簓さんから着信が入った。
「ど、どうしよう……」
既読をつけたばかりで無視するのは難しい。
それに今日は私が休みだと言うことは簓さんに知られてしまっている。
焦る私の気持ちとは裏腹に、簓さんの着信が鳴り止む気配は一向にない。
「し、仕方ない…」
そう思い通話ボタンを押そうとしたのだが、間違えて終了ボタンを押してしまった。
「へ!?ヤバっ…!」
慌てて謝罪のメッセージを簓さんに送ったが、既読がついたままで返信が来ない。
「おかしいな…」
いつもならメッセージを送った瞬間に既読がつく事がほとんどで、テレビやラジオの生放送が終わった瞬間にスタンプを送ってくれる事も多々ある。
そしてその日の夕方になっても、簓さんから返信が来る事はなかった。
「怒っちゃったかな…」
簓さんが怒った所を見た事はないが、思い返せば酷い事をしてしまったかもしれない。
忙しいなか食事に誘ってくれたのにも関わらず既読スルーに電話拒否までしてしまった。
学生ではないのだから、既読がついて返信がない相手に更にメッセージを送るのは憚れる。
大阪に帰るのは明日らしく、今日も家に泊まりに来る予定ではあったが、簓さんとこんな風に連絡が取りづらくなったのは初めてで、どうしたら良いのか分からない。
「あー、もうっ…!!」
飲みに行く。
そう決めた。