第3章 大阪スイッチ(※)
朝起きると、簓さんの姿はなかった。
その代わりにテーブルの上に簓さんが書いたであろうメモが置いてあった。
" 昨日は泊めてくれておおきに♪
お仕事いってきます。
起きたら連絡してな!
ぬるでささら "
随分可愛らしい文字だ。
そう思うと同時に、本当に芸能人と一夜を共にしたのだと改めて実感した。
まさか自分にそんな出来事が起こるなんて。
簓さんと飲むのは本当に楽しくて、こんなに話の会う人がこの世に居るのかと思った。
だがそこはきっと芸人の簓さんのトーク力のおかげだろう。
私に話を合わせてくれたに違いない。
『ラインしてみよう…』
メモに書いてあった簓さんのラインにメッセージを送るとすぐに既読がつき、どんな早さで打ったのか考えられない程の長文が送られてきた。
その日からというもの、東京で仕事がある時は私の家に簓さんが泊まりに来るようになった。
楽しく飲んで、体を重ね合わせる。
一見遠距離恋愛中の恋人同士のようだが、私達は付き合ってはいない。
簓さんから告白された事もなければ、自分から想いを伝えようとした事もない。
つまり"セフレ"という関係だ。