第2章 横浜コーヒータイム
「で、でももう少しで銃兎さんと理鶯さん来るんですよね?それまで我慢します!」
「…じゃあ、俺様と半分こするか」
そう言うと左馬刻さんは、そのコーヒーカップ型のクッキーを一つ手に取り私の口元に持ってきた。
「左馬刻さん?」
「ほら、あーん」
「あ、あーん」
左馬刻さん、今アーンて…
あれ?
左馬刻さんが口に入れてくれたのはクッキーの半分まで。
不思議に思っていると、左馬刻さんが私の食べかけのクッキーを自分の口に入れた。
「さ、左馬刻さっ…」
「なかなか美味ぇじゃねぇか。甘さも控えめで」
いやいや、それはそうなんですけど。
めちゃくちゃ美味しいんですけどっ…!
「何だよ」
「い、いやそのっ…」
間接キスじゃないですか今のっ…!!
「…まい」
口を抑えている手をどかされ、壁際へと追い込まれる。
両手も抑えられてしまっていて、身動きが取れなくなってしまった。
「さ、左馬刻さん…?」
「…さっきの続き、させろ」
さ、さっきの続きって…
もしかしてっ…
先程と同じように、左馬刻さんの顔がゆっくり近付いてくる。
やっぱり、さっきのは私にキスしようとしてたの…?
「さ、左馬刻さん…」
「まい…」
もう少しで唇が触れる。
…ハズだった。
『オイ左馬刻!もう帰ってんだろ早く開けろ!』
「じゅ、銃兎さん…?」
「…クソがっ」
そう言ってドスドスと歩きながらインターホンの施錠を解除する左馬刻さん。
すると玄関の扉を開けて銃兎さんと理鶯さんが入ってきた。
「ったく、何度鳴らしたと思ってんだ」
「っるせぇなウサ公野郎!」
「ア?何お前イライラして…」
「ど、どうもー…」
ビックリして腰を抜かしてしまったがなんとか起き上がり、目が合った銃兎さんに挨拶をする。
「…悪い。出直すか…?」
「…いや、良い…」
どこか妙に気まずい雰囲気で始まった話し合いではあったが、左馬刻さんの淹れてくれたコーヒーを飲んだら、不思議と場の雰囲気も和やかになった。
「なんだお前も気が利くじゃないか」
「アァ?そりゃあまいが持ってきたんだ」
「どうりで」
そう言って銃兎さんがコーヒーカップ型のクッキーを頬張る。