第14章 お見合い
…数日後、杏寿郎は見合いの為、
街にある料亭へと足を運んだ。
久々に会う親戚とは店の前で待ち合わせ、
そのまま中へと入っていく。
通された部屋には、誰もいない。
相手方はまだのようだ。
座布団に座り、お茶を飲んで待っていると、
少ししたら廊下から声がかかった。
相手が到着したようだ。
杏寿郎はそちらに視線を向ける事もなく、
ただ黙って前を向いていた。
中に入ってきた女性は、杏寿郎の正面に座り、その姿が杏寿郎の視界に入った。
…?!
美玖?一体何しに来た?
そこには、振袖に身を包み、
化粧を施した美玖の姿があった。
その様子を見ていた杏寿郎の叔母がびっくりした様子で声をかける。
杏寿郎、相手が美玖さんって、
私、言ってなかったかしら?
聞いていない…。
いや、しっかり聞いていなかったのか?
見合いという事しか頭に入っていなかった。
まあ、お互いよく知ってるでしょうし、
私達はもうお暇するから、
ゆっくり過ごしてちょうだい。
そう言うと美玖の母と杏寿郎の叔母は部屋から出て行き、杏寿郎と美玖、二人きりとなった。
杏寿郎は叔母が出て行ったところで美玖に話しかけた。
美玖、お前、知ってたのか?
知ってたよ、だから、
この前聞きに行ったんじゃん。
お見合い断ってばかりだったから、
てっきり断ると思ってたのに、
受けるって聞いたからびっくりして…。
なるほど!
それで先日あのような質問をしにきたんだな!
やっと合点がいった。
一人納得した所で満足したのか、
杏寿郎はお茶を飲み干すと、
美玖、時間を取らせてすまなかった!
お詫びに家まで送って行こう。
そう言って立ち上がろうとする。
だが、美玖は座ったままだ。
美玖?どうしたんだ?
杏寿郎は美玖の顔を覗き込む。
美玖は今にも泣き出しそうな顔をして、
床を見つめたまま話し始めた。