第14章 お見合い
パタパタパタパタ…
バンッ!
騒がしい足音が聞こえたのち、
煉獄家の玄関の戸が勢いよく開いた。
この家の長男であり、
鬼殺隊炎柱の煉獄杏寿郎は、不審に思いつつも玄関の様子を確認しに向かった。
…一体誰だ?
千寿郎ではないだろうし…。
玄関に着くと、走ってきたのだろう、肩で息をしながらこちらを見ている1人の娘がいた。
娘は、杏寿郎に向かって問いかける。
杏寿郎!!
お見合いするって本当?
この娘は、杏寿郎の幼なじみで、
近所の呉服屋の一人娘だ。
ああ!本当だ!
もう知っているのか!
先日、杏寿郎に親戚から見合い話があったのだ。もう既に二十歳を迎えている杏寿郎。名家の長男ならばとっくに嫁を取っていていい歳だ。
先程の娘ー…美玖は、
でも、杏寿郎…
いつもはお見合い断ってるのに…
今回はなんでお見合いするの?!
やけに食い下がってくるな…。
杏寿郎はあまりの勢いに少々面食らいつつも答える。
いや、いつも断っているからな!
今回だけは絶対と、念押しされてしまった!
…杏寿郎、結婚するの?
それは分からない!
相手があっての事だからな!
じ、じゃあ、
相手の人が結婚したいって言ったら、
杏寿郎はどうするの?
ー…美玖は知っているだろう?
俺は、鬼殺隊だ。いつ、任務の中で命を落とすか分からない。そのような男と結婚しようと思う女性など居ないだろう。
…それでも、それでもいいって言ったら…?
次から次へと来る質問。
本当に、今日はどうしたというんだ…?
疑問に思いつつも、最後の質問に対し、少しだけ笑みを見せながら答えた。
…そのように言ってくれる人ならば、共に生きていけるかもしれんな。
…そう、なんだ。
うん。わかった!またね!杏寿郎!!
質問を終えると、かかとを返して美玖は来た時と同じように走り去って行った。
嵐のようとは、こういう事を言うのだろう。
一体、何だったんだ?
一人取り残された杏寿郎は、
その場で、ぼそりと呟いた。