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炎柱

第12章 お団子





杏寿郎…様。


頭に浮かぶのは、

杏寿郎の事…。



ずっとお慕いしていたのに、

想いを告げる事もなく終わってしまった。


成就するとか、
そんな大それた事、

思っていた訳ではないけど…。



はあ〜…

意味もなくため息ばかりが出てくる。


半刻程…座り込んでいると、
陽が沈み、辺りが暗くなってきた。


……いい加減、帰らないと…。
…杏寿郎様も、もう帰ったよね。


ゆっくりと立ち上がり、
家に向かって歩いていった。


街中は、夜になり別の顔を見せていた。

飲み屋や、カフェーの看板が光り、
大人達で賑わっている。


ちょっと、遅くなっちゃった。

少し、歩調を早めて家へと急いでいると、


前に居た人に気付かず、ぶつかってしまう。


ドンっ…


っ…!す、すいません。


ん〜…あれ〜?マリエちゃん〜?
お店はどうしたのさ〜?



…?
男性は酔っているようで、
誰かと間違えて声をかけてきた。



えっと、すいません。
人違いです、、
お怪我をされていないようで何よりです。

では…


そう言って立ち去ろうとすると、
男は美玖の腕を掴む。


…!!
あの、は、離して下さい!


あ〜だってさ?
さっきぶつかった背中のあたりが、
な〜んか痛いんだよねぇ〜?



そ、そうでしたか…。
申し訳ありません…。



男はニヤリと笑うと、

じゃ、そういう事だから、
医者代でも出してもらおうか。


と、美玖に金を要求した。


あの、おいくらでしょうか?


そうだな〜
二十円くらい?


え、そ、そんな大金、
すぐにはお渡しできません…。



…どうしよう。
変な人に絡まれちゃった…。

男はニヤニヤとした笑いを貼り付けたまま、


だ〜よねぇ〜。無理だよね〜。
いいよぉ〜お金じゃなくても。
今晩、付き合ってくれたらチャラだ。


そう言って美玖の腕を引き寄せ、
肩を抱いて歩き出した。



いや、あの、
は、離して下さい!
一体どこに…


どこって〜?
着いてのお楽しみって事で!
ところで、君可愛いねぇー
誰かと、同衾した事ある〜?


…!!!


男の求めてるものを察し、
肩を抱いている手を払い除けようとした。



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