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炎柱

第8章 炎柱の恋 杏寿郎side




ー…


家に着くまで、
互いに言葉を交わす事はなかった。


居間に荷を下ろすと、
美玖が声を掛けてくる。



だが、何も耳に入ってこない。


美玖の方を向き、

そのまま、自身の胸に引き寄せ、

強く、抱きしめた。



美玖、

先程の店が、

どういうところか分かっているのか?


なるべく、
落ち着いて話そうとするが、
どうしても先ほどの怒りが蘇り、
いつもより声が硬ってしまう。


お茶を楽しむ店ではない…

という事は、分かっているな?



美玖は、黙って頷いた。



堰を切ったように、
大きな声が出てしまう。



何故、あんな時間に1人で街にいた?
お前はもう、年頃の娘なんだぞ?

偶然、本当に偶然だ…!

たまたま任務で近くを通り、
路地に消えていく美玖を見かけた。

そうでなければ、
少しでも時間がずれていたなら!


あのまま…!



そうだ…。
俺が今日、あの場に居なければ、

美玖は今頃、
あの男達に…


平静でいられるわけがなかった。


そのまま、
君が居ることを確かめるかのように
ひたすら、抱きしめ続ける。


杏寿郎さん…

ごめんなさい…。


か細い声で、そう呟き、
俺を抱きしめ返してくる。


杏寿郎さん…

怖かった…怖かったです…。


震える声で、泣きすがる姿に、
庇護欲が掻き立てられる。


本当に、間に合って良かった…。



泣き続ける美玖を
腕の中に押し込め、
強く抱き締め続けた。


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