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炎柱

第8章 炎柱の恋 杏寿郎side





すると、美玖は
バツが悪そうな表情を浮かべ、

少し躊躇したのち、言葉を続けた。



ま、待って下さい…!
そうじゃなくて…!

杏寿郎さんの事は、
大切に思っています…。

でも、兄のように慕っているわけではなく…


私はずっと…
1人の男の人として、

杏寿郎さんを…お慕いしていました…。




驚きのあまり、目を見開く。


美玖が、俺を?


男として、
慕ってくれていたというのか…。

しかし…。


俺は、今までずっと、
美玖の事を妹のように可愛がっていた。

もちろん、
好きか嫌いかと聞かれれば、

好きだ。そうに決まっている。


だが…

美玖には、
普通の幸せを掴んで欲しい。

俺のような、
明日をも知れぬような者に、
誰かを幸せにする事など…。



…杏…寿郎…さん…?


美玖から名を呼ばれ、
長らく考え込んでいたことに気付く。


一つ息を吐き、告げた。



…すまない。

美玖の気持ちに
応えてやる事が、俺にはできない。


そうだ、その方がいい。



…そのまま、
食器を下げ、美玖が出て行く。



…すまない。

だが、美玖の為なのだ。


心の中でそう呟き、
一刻程仮眠を取った。

まだ真夜中だったが、
美玖の部屋に手紙を残し

そのまま藤の家を後にした。


美玖の顔を
まともに見れそうもなかったからだ。

…不甲斐ない、俺を許せ。





それから一月余りが経つが、

あれから、美玖には会っていない。


…元気にしているだろうか?

食事は、ちゃんと摂っているだろうか…。



煉獄さん?
どうかなさいましたか〜?


胡蝶から声をかけられ、
はっと我にかえる。


ああ!すまない!
少し、考え事をしていた!


いかん。
任務中だった。

このところ、
美玖の事ばかり考えてしまう。

やはり、
あのように帰るべきでなかった。


己の不甲斐なさが嫌になる。


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