第7章 炎柱の恋
ー……
それから、家までの帰り道。
杏寿郎さんも私も、
黙って歩き続けた…。
家に着き、
杏寿郎さんが居間に荷物を置く。
杏寿郎さん…
あの…
ありがとう…ございました…。
改めて、お礼をするも
杏寿郎さんから返事はない。
杏寿郎さん…?
あの、良ければ夕餉の支度を…
沈黙に耐えかねて、
そのまま言葉を続ける。
突如、
私の身体が、
杏寿郎さんの腕に包まれる。
美玖、
先程の茶屋が、
どういうところか分かっているのか?
ずっと黙っていた杏寿郎さんが、
少し、怒気を含んだ声で、
でも、どこか辛そうな声で、言葉を発した。
お茶を楽しむ店ではない…
という事は、さすがに分かっているな?
…静かに頷く。
途端に、杏寿郎さんが、
大きな声で話し出す。
一体何故、あんな時間に1人で街にいた?
お前はもう、年頃の娘なんだぞ!?
偶然、、本当に偶然だ…!
たまたま任務で近くを通り、
路地に消えていく君を見かけた。
そうでなければ、
少しでも時間がずれていたなら!
あの人混みの中、
君の姿を見落としていたら…!
あのまま…!
杏寿郎さんの腕に力が入る。
そして、苦しいくらいに抱きしめられる。
でも、すごく暖かくて安心する。
…杏寿郎さん、怒ってる。
私の事、心配してくれたんだ…。
不謹慎だけど、
怒ってくれて嬉しく思う…。
杏寿郎さん…
ごめんなさい…。
杏寿郎さんの背に手をまわし、
抱きしめ返した。
心地良い。
さっき、男達に触れられた時は、
気持ち悪くて、
嫌で嫌でしょうがなかったのに…。
暖かい腕の中で、
安心して、
涙が溢れてきた…。
杏寿郎さん…
怖かった…怖かったです…。
杏寿郎さんは
そのまま、
強く抱きしめてくれた。