第7章 炎柱の恋
あれから1ヶ月が経ち、
杏寿郎さんとは
あれ以来会っていない。
ただ単に忙しいのか、
…避けられて…しまってるのか…。
鬱々とした気持ちは晴れないけど、
日常は待ってはくれない…。
あ、お塩とお味噌が残り少ない…。
…買いに行かないと…。
あまり気が進まず、
結局昼過ぎに街に向かい買い物を済ませた。
帰ろうと思った頃には、
日が沈みかかっていた。
重い足取りで帰路につく。
街では、もう夜になるというのに、
昼間と同じように人で溢れていた。
道の端っこを
とぼとぼと歩いていると、
突然、路地から引っ張られる。
……?!!
な、なに?!
顔を上げると、
若い男が2人、
下卑た笑みを浮かべて見ていた。
こんな時間に
1人じゃ危ないぜ?
俺たちが送ってってやろうか?
全然、
送ってくれそうな感じがしない…。
お、お気遣いどうも。
ですが!1人で帰れますので、
どうぞ、お気になさらず…。
そう言って離れようとするが、
男の手が、
私の手首を掴んで放さない。
そう言うなって。
親切で言ってるんだぜ?
荷物も重いだろ?
その辺で休んでいこうぜ?
そう言って、
私を引き摺るように歩き出す。
…まずい…!
このままじゃ……。
身の危険を感じ、
必死で抵抗しようとする。
や、嫌です!
お願い、離して下さい…!
煩えな〜?
おい、ちょっと押さえとけ。
1人がそう言うと、
もう1人の男に口を塞がれる。
そのまま、路地の先にある、
古ぼけた茶屋の前まできた。
男が店主に部屋を頼んでいるようだった。
頭から、
逃げろって警報が
ものすごい出てる…けど…、
暴れてもびくともしないし、
口は押さえられて声も出せない…。
もう、ダメだ…
涙が滲んでくる…
杏、寿郎、さん…
心の中で、
愛しい人の名を呼んだ。
そのまま、
なにもかも諦めて目を瞑り、
引き摺られていく…。