第7章 炎柱の恋
まあいいや、
どうせ、伝える度胸もないんだから…
はい!それでは、夕餉にしましょう!
既に食事は並んでいる。
共に腰を下ろし、食べ始めた。
うむ!うまい!うまい!
美玖、今日もうまいぞ!
…お粗末様です。
世辞で言っている訳ではないぞ?
すごく上達したではないか!
そう言って、
少し、意地の悪い笑みを見せる。
…!
そ、その話はやめてください!
何故だ?
努力して成長できるのはすごい事だ!
米を茶色く炊き上げた美玖が懐かしい!
〜…!!
言わないでって言ってるのに…!
杏寿郎さん、ひどいです…!
4年前の事、
当時11才だった私は、
初めて杏寿郎さんの夕餉の支度をした。
母が不在にしていて、
私しか居なかったのだ…。
今にして思えば、
何か、出前でも頼むんだった…。
よりによって、
杏寿郎さんに、
あんな食事を振る舞ってしまうなんて…
はっはっは!
いい思い出ではないか!
この腕前なら、
すぐにでも嫁に行けるぞ!
自信を持つといい!
豪快に笑って、
私の頭をぽんぽんと叩きながら、
まるで、子どもにするみたいになだめられる。
…お嫁なんて、まだまだです…。
杏寿郎さんは、
ふと優しげな眼差しを向ける。
美玖もいつまでも子供ではないのだ。
もう15になるだろう?
もう、いつ嫁に行ってもおかしくはない。
だが、変な男はダメだぞ?
兄代わりとして忠告しておく。
あぁ…わかってた…。
杏寿郎さんに、
妹のように思われている事は…。
分かってた…筈なのに…
………胸が、痛い……
私の中で、
何かが吹っ切れたような音がする。
……別に、誰だっていいです…
ダメな男でも、何でも…
むっ!
そんな事を言うものではない!
自分の身をもっと大事に…
杏寿郎さんの話を遮るように
私は声を発した。
そんなこと!
杏寿郎さんに言われたくありません…!
杏寿郎さんを兄と思った事なんて、
1度もありません…!
杏寿郎さんは、
悲しげに眉を下げながら聞いていた。
…そうか。
だが、俺は美玖を妹のように思っている。
それは、忘れないでいて欲しい。
あっ……
私っ…今、杏寿郎さんに、
すごく…ひどい事を……