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炎柱

第7章 炎柱の恋





カァー…カァー……


鴉の鳴き声が山向こうへ消えていく。

もう、日も暮れかかっている。

私は、家の前である人の到着を待っていた。


私の家には、
昔、ご先祖様が植えたという、
大きな藤の木が植わっている。

そして、門には大きく藤の花の紋。

その昔、人を喰らう鬼に襲われ、
鬼殺隊の方に助けられたご先祖様が、

その御恩をお返しする為に、

この紋を掲げたのだそう…。



よもやよもや。
すっかり遅くなってしまった!


すぐ後ろの方から
明るい声が聴こえてくる。


杏寿郎さん!
お疲れ様でございます…!


炎柱の煉獄杏寿郎さんが、
いつもの様子で現れた。


ついつい、顔が緩んでしまう。


我家は、
炎柱様の任地のはずれにあるそうで、
この辺で任務がある時は
いつもこちらにお泊まりになる。


ありがとう!
今日も、世話になるな。


杏寿郎さんを客間へ案内し、


先にお風呂になさいますか?


と声をかける。


そうだな!
そうさせてもらおう!


杏寿郎さんに、
着替えと手拭いを渡す。


美玖、いつもすまないな!
では、行ってくるとする!


慣れた様子でお風呂へ向かう杏寿郎さん。


姿が見えなくなったところで、

夕餉の仕上げをして部屋に運ぶ。


ひと通り、準備が整ったけど、
杏寿郎さんはまだのようだった。


(今のうちに…)

次の間へ行き、
お布団を敷いておく。

あとは、夕餉が終わり次第、
食器を下げて終わり…か。


鬼狩り様には、
誠心誠意尽くすよう、
子供の頃より躾けられてきた。


(…でも…)


杏寿郎さんなら、
鬼狩り様でなかったとしても、
こうしてお世話して差し上げたいな…。


ぽそっと、
1人呟いた時、


美玖!
とてもいい湯だった!礼を言う!


ふいに、杏寿郎さんから声をかけられた。


…!
き、杏寿郎さん…!

い、いま、今の…


慌てて口を動かす。

ま、まさか、今の、聞かれて…?


うん?どうしたんだ?
それよりも、美玖も夕餉はまだだろう?

早く食べてしまおう!


……聞いてなかったみたい…。


ホッとしたような…

なんだか残念なような…



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