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炎柱

第5章 共に生きる




彼が居てくれたから、
ずいぶんと立ち直る事ができた。


今では、屋敷での1人暮らしも慣れたが、
当初は寂しくて、辛くて、心細くて、

静まりかえったこの屋敷に、

もう家族は居ないのだ、と
思い知らされるようだった…。



お茶菓子を食べ終え、
縁側に2人で腰をおろした。


これも、いつもの事。


庭にある木は、
紅く色付き始めていた。


美玖…。
実は、今日は大事な話があって来た。


いつもと違う、少しトーンの下がった声。

なんだか、嫌な予感がした…。


はい。どのようなお話でしょうか…?


少し不安に思いながらも返事をする。



少し間を置いて、
杏寿郎さんが話を続けた。


実は、隊内で配置替えがあり、

一月後には新しい任地に向かわねばならない。

ここには、
もう来れなくなると思う。


どくん…どくん……
心臓が冷えていくように感じられた。


そ、そうなのですか…。
寂しく…なります…ね…。


なんとか発した言葉は
ありきたり以外の何物でもなかった。


頭が真っ白で、
何を言われたか半分も理解できていない。


(…ダメ、泣きそう…。)


私の中で、
杏寿郎さんの存在が
大きいのは、感じていた…けど、

私、杏寿郎さんをお慕いしていたんだ…。

こんな時に、自覚するなんて…。


なんとか、涙を堪えているけど、
これ以上、声を出せない。


しばらく沈黙が続いた…


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