第1章 【1年前】
バラムside
仕事が済んで職員室に提出しに行こうと思って、準備室を出た。
今日は…彼女、来なかったな……どうしたのかな。
毎日欠かさず僕の元に来てお話をしたりお茶を飲んだりするし、用事があったりしたら必ず顔を出してから帰るから
何かあったんじゃないかと思って少し心配になる。
職員室に歩いて行って帰る時、
彼女の声が聞こえた。
声のする方に行くと、彼女は、美形の男の子のしゃべっていた。
彼女がこちらを向く瞬間、思わず隠れてしまった。
隠れる必要なんてないのに…
僕は、自分の準備室に戻る途中、沢山考えた。
実は、前々からずっとおかしかったんだ。
彼女が僕の事を好きという度に、嘘なんじゃないかって何百回も思った。でも、彼女は嘘をついていなかった。
彼女の頭を撫でる度に、伝わる体温にドキッとした。きっとそれは、彼女の角が珍しいから、また、生物に対する興味なんだと思っていた。
伏し目で震える長いまつ毛が愛おしいって思ったのも、魔獣みたいでかわいいからだと思っていた。
僕は教師だから生徒を好きになるなんておかしいってわかってた。
だからこそ、気付かないふりをしていた。
でも、こればっかりは今、やっと気付いた。
取られる寸前で手放したく無くなるように、
いつも沢山、いっぱい想いを伝えてくれる彼女に、甘えていたんだ。