第1章 【1年前】
バラムside
頭が真っ白になった。
彼女が好きというのには条件がある。なんていうから。
気になってしまってつい復唱してしまった。
『あ、あの……』
「ミヤノちゃん」
『は、はいっ!』
「ごめんね。」
ズルズルと足の力が抜けていく
その場に座り込む僕に彼女は心配そうに近づいてくる
「…ごめん………」
まだ目を合わせられない。
彼女も足しか見えないし、どんな顔をしているのかもわからない。
目線は下に、彼女の方を向く
するりと彼女の両手を僕の手で包み込む
小さくて、白くて、柔らかい。
爪は黒くて彼女の白い肌がよく映えてみえる綺麗な手
僕は彼女の手の甲にコツン、とおでこをくっつけるとひんやりとした柔らかい手の温度が伝わってくる
「…」
『えっ、あの…』
「僕も、君が好きなんだよ……」
言った。
言ってしまった。
彼女はビクリと手を震わせて少しだけきゅっと握り返してくる
「本当は、伝える気なんてなかったんだ。自分の気持ちも、君の気持ちも無視して、全部終わらせようと思ってた…」
「僕は教師で…君は生徒だから……」
「…僕はずっと、君に甘えていて…自分から逃げていたんだ………」
ぎゅうぎゅうと手を握りしめられる
いつも上向きのしっぽがたらりと力が抜けたように地面に着く
「情けなくてごめん」
「いっぱい待たせてごめんね…」
恐る恐る目線を上げて
彼女の顔を見上げる
「ミヤノちゃん。もし、まだ遅くないなら…」
彼女の大きい目から涙がぼたぼたとこぼれ落ちる
「僕と…付き合ってくれませんか?」
…彼女は、いっぱい涙を流して頷いてくれた。
これが、僕達の始まり。
彼女は、落ち着いてから先生と生徒の線引きはしっかりしようといい、学校ではいつも通り、過度な接触はしないようにと契約した。
近くに居たらくっつきたくなるけど、僕と彼女が、ずっと長く続くように…
こうして、彼女が無事1年を終える頃、僕達は付き合い始めた。